日印国際産業振興協会

AI in Textiles

小さなアパレル会社こそ『情報』で戦える ── AIを企画とECの情報担当にした話

2026年6月24日

先日、あるアパレル会社さんからご相談をいただきました。社員数十名、拠点は国内のみ。企画から販売まで自社でこなす、まじめで実直な会社です。社長さんの悩みは、はっきりしていました。「うちは、情報が足りていない気がする」。 小さな会社というのは、放っておくとすぐに情報不足に陥ります。大手のように専門の調査部門があるわけでも、潤沢な展示会予算があるわけでもない。気づけばトレンドもEC周りの新しい動きも、半歩遅れて耳に入ってくる。そこで私がご提案し、実際に一緒に取り組んだのが、AIを一人の「情報担当」として雇うという方法でした。この記事では、その会社さんで実践したやり方を、使ったプロンプト(指示文)つきでご紹介します。 なぜ小さな会社は「情報」で不利になるのか 理由はシンプルで、情報を集めるのにも人手と時間がかかるからです。誰かがトレンドを追い、業界のニュースを読み、競合のECをチェックし、それを社内に共有する。大きな会社ではこれを分担できますが、数十名の会社では全員がプレイヤーで、誰も“調べる係”に専念できません。 この会社さんも、人数の割に手が足りていませんでした。企画担当は日々の業務に追われ、トレンドをじっくり調べる時間がない。EC担当も、目の前の運営で手一杯。だからこそ、「調べる・まとめる・共有する」という情報の仕事こそ、最初にAIに任せるべきだとご提案しました。情報の格差は、お金ではなく仕組みで埋められる。これが、今回いちばんお伝えしたいことです。 この記事のプロンプトは、ChatGPT・Claude・Geminiなど、Web検索ができる対話型AIを想定しています。太字や【 】の部分を自社の状況に置き換えてお使いください。最新情報を扱うので、検索機能をオンにして使うのがコツです。 ① アパレルの「企画情報」を集める 企画の出発点は、いつも情報です。次のシーズンに何が来るのか、どんな素材・色・シルエットが動いているのか。この会社さんでは、AIに、この“地ならし”をしてもらうことから始めました。ゼロから自分で世界中の情報を追うのは無理でも、AIに論点を整理してもらえば、企画会議のたたき台はすぐにできます。 大事なのは、AIの答えをそのまま使わないこと。「うちの客層・価格帯ならどう効くか」までセットで考えさせると、ただのトレンド紹介が、自社の企画に使える材料に変わります。 プロンプト例:次シーズンのトレンドを自社向けに整理する あなたはアパレル業界に詳しいトレンドリサーチャーです。 Web検索を使って、【2027年 秋冬】のレディース向けトレンドを 調べ、次の形で整理してください。 ・素材 / カラー / シルエット / ディテール の4観点で、  いま注目されている動きを各3点 ・それぞれ「なぜ来ているのか(背景)」を一言 ・最後に、【20〜30代向け・中価格帯】の当社が取り入れるなら  どこから手をつけるべきか、優先順位をつけて提案 情報源(参照したサイトやブランド)も併記してください。 プロンプト例:素材・サステナブル動向を追う 繊維・アパレルの「素材」の最新動向を知りたいです。 Web検索を使って調べてください。 ・リサイクル素材、バイオ由来素材、機能性素材で、  2027年前後に話題になっているものを挙げてください ・採用しているブランドの例があれば一緒に ・小ロットでも調達しやすいか、コスト感はどうか、  現実的な視点でコメントしてください 当社は小ロット対応とサステナブル素材を強みにしたいので、 「差別化に使えそうな素材」という観点で評価してください。 プロンプト例:競合・参考ブランドを分析する 次のブランドの「企画の方向性」を分析してください。 Web検索で最近の商品やコレクションを確認したうえで。 ・対象ブランド:【ブランド名を1〜3社】 ・分析してほしい点:  1) どんな客層に、どんな価値を打ち出しているか  2) 価格帯と、よく使っている素材・テイスト  3) 当社が学べる点 / あえて違う方向に振れる点 最後に、当社の企画会議で使える「気づき」を3つにまとめて。 ② ECサイトの「新しい情報」をつかむ もう一つ、小さな会社が遅れがちなのがEC周りです。プラットフォームの仕様変更、新しい販売手法、送料や決済のトレンド、新しいモールやアプリの動き。ここは変化が速く、知らないうちに“当たり前”が変わっています。この会社さんでも、AIにECの最新情報を定点観測してもらう仕組みを作りました。 特に役立ったのが、「専門用語や新サービスを、自社にとっての意味に翻訳してもらう」使い方です。ニュースを読むだけなら誰でもできますが、「で、うちは何をすればいいの?」に落とすところまでAIに付き合ってもらうと、情報が行動に変わります。 使うときの注意:EC関連は情報の鮮度が命です。AIが古い情報を答えることもあるので、必ず検索機能をオンにし、「いつ時点の情報か」「出典はどこか」を答えさせるクセをつけてください。重要な仕様は、最後は公式サイトで確認します。 プロンプト例:ECのトレンドを定点観測する あなたはECとD2Cにくわしいアナリストです。 Web検索を使い、【アパレル・ファッションEC】の分野で、 2027年に入ってからの新しい動きをまとめてください。 ・新しい販売手法やトレンド(例:ライブコマース、UGC活用など) ・主要モール/プラットフォームの仕様変更や新機能 ・送料・決済・返品まわりの新しい動き 各項目に「出典」と「情報の時点」を必ず付け、 最後に【自社の小規模ECが今すぐ試せること】を3つ挙げてください。 プロンプト例:新サービス・新機能を“自社目線”で評価する 次のEC関連の新サービス/新機能について教えてください。 Web検索で最新情報を確認してから答えてください。 ・対象:【サービス名や機能名】 知りたいこと: 1. これは何で、何が新しいのか(専門用語は避けて) 2. 導入するメリット・デメリット 3. 当社のような【小規模・アパレルEC】が導入する価値はあるか、   正直なところを率直に 最後に「今すぐ導入 / 様子見 / 不要」のどれかで結論を。 プロンプト例:自社ECの改善ヒントを得る 当社の自社ECサイトを改善したいです。 Web検索で、アパレルECの「成果につながる施策」の 最近の事例やセオリーを確認したうえで、助言してください。 ・当社の状況:【国内のみ・数十名規模・自社ブランドを販売】 ・特に気になる点:【商品ページの離脱が多い / リピートが弱い】 ・改善のアイデアを、効果が出やすい順に5つ ・各アイデアは、社内のEC担当が来週から試せる粒度で ・「お金をかけずにできること」を優先してください ③ 集めた情報を「使える形」にして、チームで共有する 情報は、集めただけでは意味がありません。この会社さんで特に効いたのが、集めた情報を、企画・EC・営業の誰が読んでもすぐ動ける形にすることでした。長いリサーチ結果を、会議用の要点に縮める。専門用語に注釈をつけて、担当外の人にもわかるようにする。この“要約と翻訳”をAIに任せるだけで、情報が部署の壁を越えて流れ始めました。...

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